保育士は給料の安い仕事だとよく言われますが、実際に給料が普通の仕事に比べてどれぐらいの水準にあるのでしょうか。
他にも次のように保育士の給料に疑問を持っている方は多いと思います。
- 他の保育士に比べて自分の給料はどうなんだろうか?
- 将来どれぐらい昇給するものなんだろうか?
- 稼いでいる保育士は一体どうやって上げたのだろう?
- 処遇改善されていると言われているがいつから私たちの給料に反映されるのだろう?
ここでは、保育士の平均給料(月収や年収など)や、他の職業との平均給料の比較などを2020年最新の統計データなどを元にまとめました。
保育士の平均年収はどれぐらい?
厚生労働省の令話元年(2019年)度の調査データによれば、保育士(男女)の平均年収額は次のようになっています。
※表とグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均月収は税込額(手取り額ではない)
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
※上記値は全年代の保育士(男女)の平均値
- 保育士の平均年収(詳細データ)
性別による平均年収の違い
女性保育士が9割以上を占める保育士業界ですが、性別によっても平均年収は次のように変わります。
※表とグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均月収は税込額(手取り額ではない)
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
※上記値は全年代の保育士(男女)の平均値
- 性別による保育士の平均年収の違い(詳細データ)
年代による平均月収、年収の違い
厚生労働省の平成29年度の調査データによれば、年代による保育士の平均月収、平均年収は次の通りです。
年代が上がってくるによって平均年収、月収共に上がっていっているという事がわかります。
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均月収は税込額(手取り額ではない)
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 年代による保育士(女性)の平均年収の違い(詳細データ)
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均月収は税込額(手取り額ではない)
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
※70歳以上のデータは無いので除外
- 年代による保育士(男性)の平均年収の違い(詳細データ)
職種による平均年収・月収の違い
保育士が働く場所は保育園だけではなく、以下のように実に様々な場所で保育士が活躍しています。
- 保育園(私立・公立)
- 幼稚園(私立・公立)
- 認定こども園(私立・公立)
- 家庭内保育事業(保育ママ)
- 小規模保育所A・B型
- 小規模保育所C型
- その他保育関連施設
厚生労働省が令和元年に公表した調査データによれば、職種による保育士の平均年収額は次の通りです。
※グラフは厚生労働省「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果」を元に編集部が作成
※一般保育士/一般幼稚園教諭のデータのみで算出
※年収目安は「(平成31年度3月の月収額×12)+(平成30年度平均賞与額)」で算出
※保育士には幼稚園教諭免許も一緒に保有する人も多いため幼稚園のデータも表・グラフを含んでいる
- 職種による平均年収の違い(詳細データ)
この調査データによれば、公立の幼稚園と家庭的保育事業(保育ママ)の年収額が400万を超えており一番高くなっており、その他は公立の方が私立よりも若干高めの年収額になっていることが分かります。
しかし、私立よりも公立の方が給料額が高いとは言われるものの、調査結果を見てみると確かに私立よりも公立の方が給料額が高いものの、目を見張るような差は見られません。
企業規模による平均月収・年収の違い
保育施設の規模(従業員の多さ)によっても次のように保育士の平均月収・年収には差が出ます。
厚生労働省が令和元年に公表した調査データによれば、企業規模による保育士の平均年収額は次の通りです。
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均月収は税込額(手取り額ではない)
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
※保育士(男)、保育士(女)の平均値
- 企業規模による平均年収の違い(詳細データ)
この統計結果によれば、従業員数10〜99人規模の保育施設が平均年収が一番高くなっています。
年収額という視点のみで考えると、企業規模が大きくなればなるほど給料が高くなるという訳では無さそうです。
しかし、企業規模が大きくなればなるほど、会社の福利厚生や就業規則など待遇や制度などが充実してくる傾向があるので、そういった点にお金を使っている分給料が低いという結果になっているの可能性が考えられます。
都道府県による平均年収・月収の違い
保育施設の運営費(その一部が保育士の給料)の中で多くを占めるのが地方自治体(都道府県、市区町村など)から施設に支払われる補助金です。
その補助金額は、各地方自治体によって大きく変わります。
例えば、人口の多さや、物価や各都道府県が定める最低賃金、また各都道府県や市区町村が福祉分野にどれぐらいの予算を割いているのか、などが補助金額に差が出る大きな要因になります。
厚生労働省が令和元年に公表した調査データによれば、都道府県による保育士(女性)の平均年収額は次の通りです。
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 都道府県による保育士(女性)平均年収の違い(詳細データ)
女性の場合には、東京都や神奈川県、千葉県など首都圏や、福岡県、滋賀県、愛知県、京都府と言った保育支援に力を入れている都道府県の保育士の平均年収が高い傾向にあります。
一方で男性保育士の場合には、以下のような結果となっています。
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
※「奈良県」「岡山県」については男性保育士のデータが存在せず、除外
- 都道府県による保育士(男性)の平均年収の違い(詳細データ)
男性保育士の場合には、そもそも保育士の数自体が少ないため、女性保育士のデータに比べると信頼性としては高くありませんが、男性保育士の場合には首都圏よりもむしろ地方都市の方が平均年収が高い傾向にあるようです。
雇用形態による平均年収の違い
保育士には、大きく分けて、次のような5つの雇用形態が存在します。
常勤 | 正社員 |
---|---|
非常勤 | 派遣保育士 |
契約社員 | |
臨時社員(公立保育園の契約社員) | |
パート・アルバイト |
それぞれ雇用形態によっても次のように平均年収額は大きく異なります。
※グラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」、大手求人サイトの求人の時給を集計し編集部が作成
※平均年収は「(時給×8時間)×月間20日×12ヶ月」で算出(賞与は加算していない)
※パート・アルバイトのみ平均年収を「(時給×8時間)×月間15日×12ヶ月」で算出(賞与は加算していない)
運営主体による平均年収の違い
保育施設にはそれぞれ運営元があります。
その運営元がどういった団体なのかによっても平均年収が変わります。
東京都が行なった調査データをベースに各運営元の平均年収を比べてみると次のようになります。
※グラフは、東京都福祉保健局「平成30年度東京都保育士実態調査結果(報告書)のデータを元に編集部が作成
- 運営主体による保育士(全体)の平均年収の違い(詳細データ)
この結果を見ると、一番平均年収が高いのが、地方公共団体が設立し、地方公共団体が運営を行う「公設・公営」の保育施設で働く保育士であり、一番平均年収が低いのが株式会社が設立・運営を行う保育士施設で働く保育士となっています。
他の業種に比べて高い?安い?
保育士の給料は安いと言われますが、他の業種と比べてどうなのでしょうか。
まずは、厚生労働省が令和元年に行なった調査データをベースに全業種の平均年収(女性)と保育士(女性)を比べてみると次のようになります。
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 他の業種(女性)と保育士(女性)の平均年収の違い(詳細データ)
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 他の業種(男性)と保育士(男性)の平均年収の違い(詳細データ)
この結果を見ると、女性も男性も全業種の平均年収額よりも共に下回っており、男性保育士については大きく平均よりも下回っていることが分かります。
一方で女性保育士については全業種の女性平均より下回り度合いが少ないと言えます。
また、「栄養士」「幼稚園教諭」「ケアマネージャー」「ホームヘルパー」「福祉施設介護員」など保育・福祉関連業種の平均年収額と保育士を比べると以下のようになります。
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 保育・福祉関連業種(女性)と保育士(女性)の平均年収の違い(詳細データ)
※表及びグラフは、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 保育・福祉関連業種(男性)と保育士(男性)の平均年収の違い(詳細データ)
保育・福祉関連業種の中では保育士の給料は女性であれば高め、男性であれば低めという結果となっています。
役職による平均年収の違い
保育士の給料は役職によっても変わってきます。
厚生労働省が令和元年に公表した調査データによれば、役職による平均年収の違いは以下のようになっています。
※グラフは厚生労働省「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果」を元に編集部が作成
※年収目安は「(平成31年度3月の月収額×12)+(平成30年度平均賞与額)」で算出
- 私立保育園の役職による保育士(男女)の平均年収の違い(詳細データ)
※グラフは厚生労働省「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果」を元に編集部が作成
※年収目安は「(平成31年度3月の月収額×12)+(平成30年度平均賞与額)」で算出
- 公立保育園の役職による保育士(男女)の平均年収の違い(詳細データ)
この結果を見てみると保育士と主任保育士の間には大きな差があることが分かります。
保育士が主任保育士になるまでになかなか昇給しないというのがこれまでの状況でしたが、平成29年度から施行された保育士の処遇改善により、これまでは保育士と主任保育士、施設長(園長)という役職しかなかったところに、次の2つの役職が加わり、より保育士の給料が上がりやすくなりました。
- 職務分野別リーダー:月額5,000円昇給
- 副主任保育士、専門リーダー:月額40,000円昇給
そのため、今後は上記調査データに「職務分野別リーダー」「副主任保育士」「専門リーダー」という役職が加わり、全体的に保育士の平均年収、月収額も上がっていくことが想定されています。
実際保育士の給料は上がっているの?保育士の平均月収・年収の推移
国が主導で保育士の処遇改善が進んでいるとは言うものの、給料が上がってる実感が持てないという方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省がこれまで行なってきた調査を元に出した保育士の平均年収の推移が以下の通りです。
※表及びグラフは、平成22年度〜令和1年までの厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 保育士(女性)の平均年収額の推移(詳細データ)
※表及びグラフは、平成22年度〜令和1年までの厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を元に編集部が作成
※平均年収は「(平均月収×12ヶ月)+平均賞与」で計算
- 保育士(男性)の平均年収額の推移(詳細データ)