賛否両論?縦割り保育(異年齢保育)の狙いやメリット・デメリット

日本の学校では年齢によってクラスが分かれている場合がほとんどです。しかしひとたび社会にでれば、様々な年齢の人間と交流することがとても重要になってくるのです。年齢の違う人と交流できることは社会で生きていくうえで大切な能力です。

ところが少子化が進む日本では、一人っ子や兄弟が少ない家庭が多く年齢の違う子ども同士で遊ぶ機会がどんどん減っています。

そこで今注目されているのが縦割り保育(異年齢保育)です。

縦割り保育では年齢によるクラス分けを撤廃し、異年齢の子ども達を一緒に保育します。縦割り保育には様々なメリットがありますが、導入する際には気を付けたい点も同じく存在します。

この記事では縦割り保育の狙いやメリット・デメリットを解説していきます。縦割り保育に興味がある保育士さんはぜひ参考にしてください。

目次

縦割り保育(異年齢保育・混合保育)とは?

縦割り保育とは、年齢の違う子ども達を混ぜて保育する方法です。「異年齢保育」や「混合保育」の名称で呼ばれることもあります。逆に年齢ごとにクラスを分けて保育する方法を横割り保育と呼ぶことがあります。

一口に縦割り保育といっても、園の方針によって導入の仕方は様々です。

例えば未満児(0~2歳児クラス)と以上児(3歳児クラス~)のように大きな年齢区分で2つのクラスに分ける方法があります。また全くクラスを作らず、園全体で保育を行うタイプの縦割り保育を行う園もあります。

縦割り保育を通年で行うかどうかも園次第です。日替わりで縦割り保育と横割り保育を行ったり、課外活動や給食の時間など一部の活動を縦割り保育にあてることもあります。

では、具体的にはどのような保育園が縦割り保育を取り入れているのでしょうか。

主に次のような教育法を導入している園では、縦割り保育を行っていることが多いです。

モンテッソーリ教育

縦割り保育はモンテッソリー教育の考え方を元にしています。

モンテッソリー教育はイタリアの医師で教育家のマリア・モンテッソーリが提唱した教育法です。100年以上昔に考えられた教育方法にもかかわらず、現代でも世界中から指示されています。

モンテッソリー教育では「子どもには、自分を育てる力が備わっている」という理念の下、子ども達の自発的行動による発達を促します。子どもたちが自己教育力を十分に発揮するためには適切な環境が必要という考え方から、子ども達の興味を刺激する教具を取り入れ、子どもたちがしたい活動を自由にできるようにします。

モンテッソリー教育では大人の価値観で分けられた年齢別クラスでの一斉活動よりも、子どもの自主性や社会性が育つ縦割り保育の方が相性がよいのです。

イエナプラン教育

イエナプラン教育はイエナ大学の教育学者、ペーター・ペーターゼンが考え出した教育方法です。オランダでは特に人気があり、発祥国のドイツをしのぐ勢いで積極的に採用されています。

イエナプラン教育の目標は、特徴の違う他人を認め、協力して積極的に社会参加できる大人を育てることです。

イエナプラン教育では学級は年齢の異なる子どもたちで構成され、会話・遊び・仕事(学習)・催しという4つの活動を循環して行っていきます。障がい児と健常児が同じように学ぶインクルーシブ教育に力を入れている点にも特徴があります。

ピラミッドメソッド幼児教育法

ピラミッドメソッド幼児教育法(ピラミーデ幼児教育法)はCito(オランダ政府教育評価機構)によって開発された教育法です。子どもの自主性を重んじ、自分で選択する力、決断力の習得を重視しています。

ピラミッドメソッド教育法では、子どもたちの学ぶ意欲を刺激する保育環境の設定が重視されます。用意された遊びのコーナーのどこで、誰と遊ぶか(一人で遊ぶ場合もあります)は年齢によって一方的に設定されるのではなく、子どもたちが自分で決めることになります。

ピラミッドメソッド幼児教育法での保育方法は「プロジェクト」と呼ばれ、子どもたちは11のテーマに添った遊び活動をグループや単独で行っていきます。プロジェクトでは保育士が一方的に子どもに教えるのではなく、保育士と子ども、あるいは子ども同士が相互に学びあうことが重視されます。

縦割り保育を行うねらい

縦割り保育を行う狙いは、異年齢間での交流を活発することで、社会で生きていくための力(社会性、協調性、忍耐力、思いやりの心など)を育てるというものです。

少子化が進む現代では、子どもたちの世界は非常に狭くなっています。昔は兄弟姉妹が多い大家族があちこちに見られました。近所の公園や児童館には近所のお兄さん、お姉さんが遊びに来ていて、小さい子と一緒に遊んでいたものです。しかし一人っ子が増えた今では、家庭では大人に、園では同年齢の子に囲まれ育つ子どもは珍しくありません。近所で遊んでいたお兄さん、お姉さんたちは学童保育や塾に通うようになり、街中で遊んでいる子どもの数はどんどん減っています。

このような環境では、異年齢間で交流ができる場を積極的に作り出すことが必要になります。子どもたちは、いずれは年齢や立場が違う他人と関わって生きていかなければなりません。社会で生きていくための「自分と違う他人と接する」力を、年齢の違う子たちとの交流で育てようとするのが縦割り保育なのです。

縦割り保育のメリット・デメリット

縦割り保育にはメリットがたくさんありますが、その反面デメリットもいくつか存在します。

ではどのようなメリット、デメリットがあるのか具体的に見ていきましょう。

縦割り保育のメリット

縦割り保育のメリットは主に以下の4つになります。

異年齢間の交流で共に学びあうことができる

年上の子が年下の子と遊ぶときは、年下の子を気遣い優しく接したり、遊び方を教えようとするものです。そして年下の子に優しくできたり、年下の子から慕われたりすることは年上の子の自信に繋がります。加えて遊び方をうまく説明しようとすることで、遊びに対する理解も深まります。上手にできない年下の子を待ってあげることは、忍耐力を育むことにもなります。

逆に年下の子は「こうしたい」という具体的な見本を年上の子に見ることができます。自分のことを自分でやっている姿を真似したり、年上の子の遊びに興味を持ったりして、発達が促されます。

このように子ども同士で共に学びあうことができるのは縦割り保育の大きなメリットです。

人間関係に広がりが生まれる

年齢で分けられたクラスでの人間関係は固定されがちです。とくに保育園で何年も生活すると、同年代での人間関係や上下関係が決まってしまうことがあります。

一方縦割り保育では、同年代以外に人間関係を広げることができます。

自分の居場所を増やし一緒に遊べる友達の幅が広がることは、社会で生きていく上でとても重要なことです。

発達の差が目立ちにくくなる

年齢別に分けたクラスの中でも、4月生まれと3月生まれの間には大きな発達の差が見られます。このような差は年齢が小さいほど目立つもので、低年齢のクラスでは生まれ月によってできることがかなり変わってきます。同じ活動をしていても3月生まれの子はいつも遅れがち、失敗しがちになり、先入観やコンプレックスが生まれてしまうこともあります。

縦割り保育では1人1人の年齢差が際立つため、月齢による小さな差は目立ちにくくなります。

社会性や協調性が身につく

社会に出れば、学校のように同じ年齢の子どもたちだけで固まっていることはできません。自分より小さい子や大きい子がいる縦割り保育の環境は、社会的に見て非常に自然な状態です。自分とは明らかに違う子どもたち同士の中で、どのように行動すればうまく遊べるのかを考えるようになり、社会性や協調性が身についていきます。

縦割り保育のデメリット

一方で、縦割り保育には次のようなデメリットもあります。

異年齢の子がいる環境にストレスを感じる子もいる

一人っ子だったり今まで同じ年代の子としか過ごしたことがない場合、異年齢の子に囲まれているという環境がストレスになる場合もあります。

また、次のように特定の子どもに負担がかかってしまう可能性がでてきます。

  • 「大きい子が小さい子を押しのけてしまい、小さい子に遊びの順番がいつまでも回ってこない」
  • 「小さい子がいる手前、保育士に十分に甘えられず、大きい子が欲求不満になる」

年下の子が年上の子に甘えて受け身になってしまう可能性がある

年上の子は年下の子のお世話を積極的に引き受けてくれることが多いです。ところが時に年下の子ができることまで、何かと手を出してしまうこともあります。

年下の子が年上の子に甘えすぎて身の回りのことを何もしない状態になってしまっては、生きる力を育てるという目標とは真逆の結果になってしまいます。

事故や怪我の可能性が高まる

小さいうちは年齢による身体能力の差はかなり大きいものです。

大きい子のダイナミックな遊びに小さい子が巻き込まれて、怪我をしてしまう可能性は高いです。

またビーズ遊び、パズル遊びなどパーツの細かい部品が出てくる活動は小さい子にとって誤飲の危険性が高まる危険なものです。

保育士側の縦割り保育のメリット・デメリット

次に、縦割り保育を保育士の立場から見た場合のメリット・デメリットについても見てみましょう。

保育士側の縦割り保育のメリット

保育士側の縦割り保育のメリットは次の3つです。

園児たち同士のかかわりで学ぶ力が伸ばせる

前述したように、縦割り保育では異年齢の子と交流することで、子どもたち同士が学びあうことができます。

保育士が子どもたちの遊びのお手本としてふるまうこともできますが、より年齢の近いお兄さん・お姉さんが目の前で遊びを教えてくれるのは子どもたちにとって大きな刺激になります。

思いやりの心を言葉ではなく、環境で育てることができる

保育士がいくら言葉で「友達に優しくしてね」と伝えても、なかなか子どもにとって実践するのは難しいものです。

特に自分と同じ年齢の子とおもちゃの取り合いをする時は、負けん気の方が買ってしまいがちです。

一方同年齢の友達にはできなくても、自分よりずっと小さい子に対してはおもちゃを譲ってあげられるという子どもは多いです。

縦割り保育という環境を用意することで、思いやりの気持ちを自発的に育てることができます。

クラスの雰囲気が落ち着いたものになりやすい

縦割り保育では、年上の子たちは年下の子たちの前でお姉さん、お兄さんらしく落ち着いてふるまおうとします。

そんな年上の子の態度をお手本にすれば、年下の子たちも落ち着いて遊ぶことができます。

結果的に同年齢の子たちで集まっているよりもクラスの雰囲気が安定しやすくなります。

保育士側の縦割り保育のデメリット

一方で保育士側にも縦割り保育のデメリットとして次のようなことがあります。

年齢が違う子みんなが楽しめる保育活動を考えるのは難しい

子どもたちが楽しめる遊びというのは、年齢によってかなり変わってきます。

例えばゲーム1つとってもそうです。1歳児向けの簡単なゲームは大きい子にとって退屈ですし、4歳児向けの複雑なゲームには小さい子が付いていけません。

どのような保育活動をすればどの年齢の子も楽しめるのか考えるのは、なかなか難しいものです。

みんなが安全に遊ぶための工夫が必要になる

縦割り保育のデメリットの1つは怪我や事故の可能性が高まることでした。縦割り保育をする時、保育士は小さい子と大きい子がどちらも安全に楽しく遊べる環境を考える必要があります。

乳幼児に対する接し方に気を配らなければならない

赤ちゃんやよちよちあるきの子は、大きい子に大人気です。

しかし、乳幼児の扱いは大人でも一歩間違えば大けがに繋がる難しいものです。

強い力で引っ張らないようにする、一人で抱っこしないなど、乳幼児に対する年上の子の扱い方に、常に気を配る必要があります。

縦割り保育を行う上での注意点

ここで、デメリットから見えてくる縦割り保育を行う上での注意点を確認してみましょう。

注意点1:安全面に配慮する

縦割り保育の活動では、年齢差による様々な危険性が存在します。細かいもので遊ぶときは小さい子が入れないようなコーナーを作ったり、トラブルが起こったときすぐ対処できるよう保育士の配置を計画する必要があります。

特に乳幼児が混ざる縦割り保育では、年上の子がよかれと思ってした行動が事故につながることもあります。乳幼児のそばでは保育士がしっかり見守るようにしましょう。

注意点2:年齢ごとの活動や玩具を取り入れる

保育活動の中にはスポーツや製作活動など、年齢ごとに行った方が遊びの質が高まるものもあります。玩具についても誤飲に繋がらない様にと種類を制限しすぎると、大きい子の創作意欲をそいでしまう可能性があります。

小さい子の邪魔が入らない環境で集中した方が面白くなる、未満児だけでゆったりと遊んだほうが負担が少ないなどと判断できる活動があれば、年齢ごとにわかれて取り組むようにしましょう。

このような事情もあるため、縦割り保育を通年ではなくスポット的に取り入れている園もあります。行事の時のみ縦割り保育にする、給食の時は園児がそろって食事をするなど、年齢ごとの活動と異年齢での活動を分けることも考えてみましょう。

注意点3:子どもの負担やストレスに配慮する

縦割り保育の環境がストレスになってしまう子どもへの配慮も大切です。年齢の違う子と関わる機会が少なく戸惑いを感じている子に対しては、保育士がうまく仲立ちをしてコミュニケーションをとれるように支援していきます。また年下の子のお手本になろうとして、我慢や無理をしている子がいないかどうかにも気を配りましょう。お兄さん、お姉さんの立場といってもまだ子どもであることを忘れてはいけません。

縦割り保育は賛否両論だが、注目されている保育方法!

縦割り保育には幅広い年齢の子と関わることで子ども同士が学びあえるなど、いろいろなメリットがありました。

一方で安全性の問題やストレスを感じる子どももいるなど、デメリットも存在します。

賛否両論ありますが、少子化の現在、年齢の違う子ども同士で遊びあえる環境を提供できる縦割り保育は注目されている保育法です。

縦割り保育に興味があるなら、メリット、デメリットを理解した上で、どのように保育に取り入れたらよいのか考えてみてはいかがでしょうか。