保育士として働いている方の中には、職場の環境や日々の業務へ不満から「保育士を辞めたい」と思っている方や「実際に保育士を辞めた」という方も一定数います。
では、保育士を辞めた方たちはその後どのような仕事をしているのでしょうか。
今回は152人の保育士さんにアンケートを取って、保育士をやめたその後の仕事は何をやっているのかについて調べてみました。
保育士の退職理由で多いのは?
東京都福祉保健局が行った「平成30年度東京都保育士実態調査結果」によると、保育士を辞めた理由として1番多く挙げられたのは「職場の人間関係」でした。
次いで「給料が安い」「仕事量が多い」などといった待遇や日々の業務に関する理由が挙げられています。
ー 参考元:東京都福祉保健局『平成30年度東京都保育士実態調査結果』
1位:仕事をしていない(57人)
保育士を辞めた理由として上位に入るのが、妊娠・出産・結婚です。
妊娠・結婚・出産によるライフスタイルの変化によって家庭と保育士の仕事との両立が難しいために一時的に保育士を辞め、子育てや家庭がひと段落ついた段階で復職する人が多い傾向にあります。
復職時の就業形態はパート保育士や派遣保育士など、時短勤務が可能な働き方が人気です。
妊娠・出産を機に保育士を退職しました。産休を取ろうかどうか迷ったのですが、なるべくゆっくり子どものそばにいてあげたいと思ったので思い切って辞めることにしました。
子育てが落ち着いたら復職したいと思っています(20代 R.Kさん)
結婚したタイミングで保育士を辞めました。辞めた理由は家庭のことがおろそかになるのが嫌だったからです。また、今まで辞めようか悩んでいた職場だったので、結婚といういい機会に円満に退職することができてよかったです。(30代 I.Kさん)
2位:事務職(33人)
妊娠・出産・結婚といったライフステージの変化にともなう退職理由の他には、「人間関係」や「仕事量の多さ」「労働時間の長さ」など、職場の環境や日々の業務から生まれる不満も保育士の退職理由の上位に入っています。
職場の環境や日々の業務への不満によって保育士を辞める人の中には保育士の仕事自体に嫌気がさしてしまったという場合も多く、次の仕事に保育士とは全く関係のない仕事を選ぶ人が多くいます。
保育士を辞めた後の転職先として特に人気の職種は「事務職」です。
事務職は土日休みの固定給が多いことや、早番や遅番などがなく勤務時間が安定していることが理由として挙げられます。
また、少数ですが職場の環境や日々の業務へのへの不満ではなく、「他の職種に興味を持ったから」というポジティブな退職理由もありました。
保育士をしていた給与面に不満があったのですが、今の会社に転職してからは満足しています。残業代が出るようになったのも大きいですし、交通費などの細かい費用も会社からもらえるようになりました。転職してよかったです。(30代 U.Hさん)
保育士時代は先輩とそりが合わないのが悩みの種でした。保育士はまだまだ女社会なのでドロドロとした職場でした。そんな環境が嫌で思い切って保育士とは関係のない会社に転職しました。デスクワークが多く体力的にも余裕を持って働けるだけでなく、職場の人たちの雰囲気もよく、ストレスフリーで出勤できています。(20代 Y.Hさん)
3位:パート保育士(19人)
保育士を辞める理由として「仕事量の多さ」「労働時間の長さ」「健康上の理由」という理由が上位にあがっています。
その中には「仕事量が多くてフルタイムで働く自信がない」などという理由から、稼ぎは減るもののより少ない時間から働ける「パート」という働き方を選ぶ人も多いようです。
また、妊娠・出産を経験し子育てがひと段落ついた段階で、フルタイムへのひとつのステップとしてパート保育士として復職する方も一定数います。
前の職場は残業や持ち帰りの仕事が多く、家族との時間があまりとれずにいました。そこでパートとして復職し時短で働くことにしたところ気持ちに余裕が生まれ、些細なことでイライラすることがなくなりました。家族も一緒にいられる時間が増えたので喜んでいます。(40代 O.Nさん)
昨年、腰を痛めたことをきっかけに保育士を辞めました。パートとして復職したのは時短勤務が可能だからです。また、担任を持つこともないので仕事量も多くありません。自分の働き方で仕事ができるという点で私にあっていると思っています。(50代 Y.Sさん)
4位:派遣保育士(18人)
パート保育士と同じく、「仕事量の多さ」「労働時間の長さ」「健康上の理由」などといった理由で保育士を辞めた後の仕事に派遣保育士を選ぶ方もいました。
派遣保育士は正社員よりも柔軟にライフスタイルに合わせた働き方ができるのに、正社員並みに稼げる雇用形態です。
働きやすさや待遇の面を考え、正社員という安定した雇用形態を捨てて派遣という働き方に切り替える方も多いようです。
派遣保育士になってよかったことは、時間通りに退勤できる点です。正職員として勤めていたころは帰りが21時になることや、持ち帰りの業務を遅くまでやっていることもありました。派遣保育士として働くようになってからは、残業も持ち帰りもないので疲れが溜まらず、元気に出勤できています。(30代 U.Kさん)
クラス担任は荷が重いことから、保育補助という条件で派遣保育士になりました。業務範囲があらかじめ決まっているのでプレッシャーもなく、自分らしく子どもと関わることができています。思ったよりも時給が高いのも良かった点です。(40代 A.Fさん)
5位:保育士(15人)
一度保育士を辞めて転職活動をしているうちに、また保育士に転職してしまうケースも少なくありません。
その中には、結婚やパートナーの転勤にともなって「保育士を辞めざるを得ない」という状況になり一時的に保育士辞め、転居先でまた保育士になるというケースも見られます。
以前は認可外保育園に勤めていました。働いていく中で給与や賞与が業務量に見合わないと感じ始めたので保育士を辞めました。しかし、転職活動をしているうちに院内保育園や事業所内の保育園は給与や待遇が良いことを知りました。今はまた保育士として院内保育園に勤めています。(30代 H.Kさん)
夫の転勤により、保育士を辞めました。保育士はすごく好きな仕事だったので残念でしたが、引っ越しが落ち着てからまた保育士として働こうと決めていました。保育士として復帰できた今は、子どもと関われる喜びをこれまで以上に感じています。(20代 K.Sさん)
6位:ベビーシッター(10人)
保育士を一度辞めた方の中には、ベビーシッターとして再び保育に関わる方もいます。
収入面での不安定さはあるものの、フリーランスや派遣など働き方も選べて自由度が高い点がベビーシッターが保育士の転職先として人気がある理由です。
以前勤めていた保育園は1クラスに15人の子どもがいて、毎日目の前のことで精一杯でした。ミスが多くなってきたことから、私には大勢の子どもをみるのは合わないと感じはじめ、一対一で子どもと関わることができるベビーシッターに興味を持ちました。今はフリーランスとしてベビーシッターの登録サイトを利用して自分のペースで働いています。(30代 H.Sさん)
前の職場の人間関係が悪く、煩わしさを感じていました。他の保育園に転職するかどうか迷ったのですが、人間関係の煩わしさもなく子どもと保護者にしっかりと寄り添えるベビーシッターを選びました。ベビーシッターとしてまたリピートしてくれた時の喜びはひとしおです。(40代 U.Hさん)
保育士を辞めたいと思ったら、まずは保育士資格を活かせる職場からあたっていこう!
保育士を辞めた方の中には、事務職など保育士とは関係のない職業に就く方も多くいます。
しかし、保育士という職業は普段あまりパソコンを使う作業がないため、一般企業への転職が難しい傾向にあります。
しかし、現在はベビーシッターや保育ママ、幼児教室の先生など保育士資格を活かして働ける職場はたくさんあります。
少し珍しい例ですが、保育士の求人サイト運営会社や保育園を運営している会社の事務などという選択肢もあります。
保育士として働いた経験を活かして活躍できる職場を探してみましょう。