保育士が働く場所は保育園だけとは限りません。保育士は児童養護施設や乳児院、障がい児入所施設などでも求められる存在です。
同じ保育士という職業でも施設で働く保育士と保育所で働く保育士の間には、仕事内容や働き方、待遇などかなりの違いがあります。
この記事では施設保育士と保育所保育士の違いを解説していきます。保育所とは違う環境で働いてみたい人、保育士という仕事によりやりがいを求めている人はぜひ参考にしてみてください。
施設保育士とは?
児童福祉施設は児童福祉法によって定められています。児童福祉施設の中には保育所はもちろん、児童養護施設や障がい児入所施設、乳児院なども含まれています。
施設保育士とは、保育園以外の児童福祉施設で働く保育士を指す言葉です。
児童福祉施設と1口に言っても、入所している子どもの年齢や特性、家庭事情は様々です。それにあわせて求められる保育士の役割も変わってきます。
施設が担っている社会的役割と目的を共有し、適切な支援を行っていくのが施設保育士の仕事です。
施設保育士と保育所保育士との違い
施設保育士と保育所保育は同じ保育士にもかかわらず、多くの点で違いがあります。
まず第一に働く場所が違うため、仕事内容や勤務形態が違ってきます。
さらに施設保育士は家庭環境に恵まれない、障がいを持っているなど背景が複雑な子どもたちを対象にすることが多い仕事です。
保育士としてのスキルだけでなく、児童心理・障がいに対する知識などを自分で学んでいく姿勢が求められます。
ここからは、多くの施設保育士が活躍する「児童養護施設」「乳児院」「障がい児入所施設」を中心に、施設保育士と保育所保育士の違いを比較していきます。
働く場所の違い
施設保育士と保育所保育士の一番の違いは働く場所です。
保育所は児童福祉法により「保育を必要とする乳児・幼児を保護者の元から通わせる施設」と定められています。
一方、児童養護施設は「保護者のいない、あるいは保護者がいても虐待されている児童を養護する施設」です。また乳児院は「家庭の事情などで保護者が養育できない2歳未満の乳児を預かる施設」です。
2つの施設は保育所とは違い、家庭から通う施設ではありません。預けられている子どもたちは保護者がいなかったり、保護者が役割を果たしていない複雑な環境に置かれています。
障がい児入所施設は「身体や精神、知的に障がいがある児童の介護、生活支援、能力向上のための訓練を行う施設」です。保育士は一人一人の障がいに応じた保育や支援が求められます。障がいについての知識を身に着けていく努力も必要です。
仕事内容の違い
次に仕事内容の違いについて比較していきます。保育所保育士と施設保育士の仕事は子どもの生活をサポートするという部分は共通しています。一方で細かい部分に違いも見られます。
児童福祉施設の中には保育園と認定子ども園も含まれています。記事の趣旨からして、子ども園で働く保育教諭も施設保育士とは言えないと思いますが、多くの記事が「施設保育士は保育園以外の児童福祉施設で働いている」としていたため、ここでは子ども園には触れていません。
保育所保育士 | ・登園から降園までの食事、排泄など生活のサポート ・午睡の見守り ・行事や遊びの提供 ・育児相談 ・地域交流 |
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施設保育士 | 【児童擁護施設】 ・起床から就寝まで1日の生活全般のサポート ・行事や遊びの提供 ・他者への信頼回復を援助 ・進路相談 ・学習支援 ・自立支援 【乳児院】 ・ミルクあげ(夜間含む)、オムツ交換、入浴など1日の生活全般のサポート ・午睡の見守り ・夜泣きのケア ・保護者のサポート、育児指導 ・退所後の親子のアフターケア 【障がい児入所施設】 ・起床から就寝まで1日の生活全般のサポート ・コミュニケーションに対する支援 ・身体能力や生活能力を維持・向上させるための訓練 ・行事や遊びの提供 ・学習支援 ・自立支援 ・進路指導 |
働き方の違い
保育所保育士の役割は、保護者が子どもを保育できない間、子どもたちを預かることです。
休日や夜間に保育を行う保育所もありますが、基本的には平日日中が勤務時間になります。
ただし日中の保育時間は保育室にいなければならないため、事務仕事や行事準備は子どもたちが帰った夕方や午睡中に交代で取り組みます。
行事前は夜遅くまで残業になることもあります。
一方保育所と違い、児童養護施設などの福祉施設では子どもたちが毎日家庭に帰っていくことはありません。
施設は24時間体制で子どもたちを養育します。
保育士にも夜勤や早朝勤務が存在し、生活は不規則になりがちです。
ただし子どもたちは長期休み以外の平日昼間には学校に通いますので、その間に仕事を進めることができるというメリットもあります。
給料や待遇の違い
基本的な給料は保育所保育士も施設保育士もそこまでの違いはありません。
ただし施設保育士の場合は夜勤があるので、夜勤手当が付く可能性があります。
保育所保育士と基本給は同じでも夜勤手当を加算すれば、施設保育士の方が給料総額は多いことになります。
また施設保育士は賞与が4か月分など高い水準になる場合もあります。
なかには家族手当や住宅手当など福利厚生が手厚い求人もみられます。
どのような待遇で施設保育士を募集しているかは、求人先次第です。
転職の際には賞与や福利厚生欄もよく見て、総合的な待遇で判断するとよいでしょう。
必要な適正・能力・資格の違い
保育所保育士がかかわるのは基本的に小学校入学前までの子どもです。乳幼児の学びの芽を育てるため、遊びの専門家としていろいろな保育を展開する能力が求められます。
また保護者と2人3脚で子育てを行っていくので、子育て相談のスキルなども必要になります。
一方で設保育士は保護者がそばにいない子どもたちにとって最も身近で関わる大人です。
進路相談や生活指導なども行うため、その子の一生を左右する価値観を一緒に作り上げていく仕事といえます。
施設に入所している子どもたちは心に傷を負っていたり、人とのコミュニケーションを避けてしまう場合も多いです。
施設保育士には様々な年齢や特性の子ども1人1人と粘り強く向き合う忍耐力、子どものつらい気持ちを受け止める包容力などの適性が求められます。
なお施設保育士として働くときは、以下のような資格を持っていると役に立ちます。
- 社会福祉士:身体障がい、精神障がいから経済的困難まで様々な事情から日常生活を送るのが難しい人に対する支援の専門家(ソーシャルワーカー)です。子どもから大人まで、幅広い年齢層を支えます。
- 介護福祉士:介護のスペシャリストです。介護福祉士といえば高齢者を対象にしているイメージがあるかもしれませんが、障がい者支援にも役立つ資格です。
- チャイルドマインダー:チャイルドマインダーは少人数保育の専門家です。保育士は集団保育のプロですが、チャイルドマインダーは家庭的な雰囲気で保育を行う場合に使える資格です。
- 保健児童ソーシャルワーカー:子どもに特化した社会支援を行うのが保健児童ソーシャルワーカーです。いじめや不登校、虐待など様々な問題に直面している子どもに対し、支援を行います。学校や保護者、各種機関と連携して問題解決にあたります。
- 児童指導員任用資格
児童発達支援事業や児童発達支援センター等で働くときに求められる任用資格です。障がい児への療育やケースワークなどを行います。
施設保育士と保育所保育士は似ているようで全然違う!
施設保育士と保育所保育士は子どもと関わるという面では似ていますが、実は様々な面で違いがあります。
施設保育士の仕事は子どもと関わる時間が長く、夜勤もあります。その分夜勤手当などの加算があり、基本給自体は保育所保育士とさほど変わりませんが、給料総額は高くなる傾向にあります。
また関わる子供たちの年齢も保育所保育士と施設保育士ではかなり違います。小学生以降の子どもたちを支援することもあるので、学習指導・進路指導・自立支援など仕事内容は幅広くなります。
施設保育士と保育所保育士の違いを把握したうえで、自分はどちらに向いているのかを判断してください。