現在、核家族化、働く女性の増加、待機児童解消のためなどで保育園の数は年々増加しています。
保育園で預かる子どもの人数が増加していることにともない、多様なニーズにこたえることが求められ、障がい児保育を積極的に行う保育園も増えてきています。
厚生労働省・「各自治体の多様な保育(延長保育、病児保育、一時預かり、夜間保育)及び障害児保育の実施状況について」によると、障がい児保育を行っている施設の数は平成22年度では1万3950ヶ所ですが平成30年度では約4000ヶ所増加し、1万8137ヶ所となっています。
また障がい児保育の実施人数の推移は、平成22年度の4万5369人から平成30年度には7万8809人と2倍弱増加していることがわかりました。
集団生活をする保育園では障がいのある子どもを預かった場合、どの子どもも安全に安心して過ごすことができるようにきめ細やかなケアと特別な支援を必要としています。
そこで活躍するのが加配保育士と呼ばれる保育士です。
ここでは加配保育士の仕事の内容や給料、必要なスキルなどについて説明します。
加配保育士とは?
加配保育士とは障がい児や特別な支援が必要な子どもを保育するにあたり、基準よりも多く配置された保育士のことです。
具体的には厚生労働省・「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」で定める保育士の人数は保育所の場合0歳児3名、1・2歳児6名、3歳児20名、4・5歳児30名につきそれぞれ保育士1名以上を配置しなければなりません。
加配保育士はその配置基準の人数を超えて加算される保育士のことです。
保育園によっては担任を持っていない主任がその役割を果たすこともあります。
しかし主任が障がい児を担当していると1日中その子どもについていなければならないといった事態が生じてしまい、本来の主任業務ができなくなってしまいかねません。
したがって特別な支援が必要な子どもだと自治体に認めた場合、主任保育士が主任業務に専念するために、加配保育士として別の職員を配置する場合も多いのです。
大勢の子どもたちが集団生活をする保育園では、障がい児など特別な支援を必要とする子どもは周りの子どもたちについていけない場面や本人が困った場面、自他ともに危険な場面が出てきます。
そうした場面の時にサポートすること、または根本的にそうした場面をなくしていくのが加配保育士の主な役割です。
逆に言えば保育士の適切なサポートさえあれば、集団生活が難しいと思われる子どもでもいわゆる障がいのない子どもたちと一緒に生活しても困難に感じることなくいきいきと生活できるのです。
それだけ保育園など集団生活をする場面では加配保育士のサポートが重要になっていきます。
加配保育士の配置基準
加配保育士の配置人数は子どもの障害の程度や発達の度合いにより自治体の専門機関を通して決めていきます。
しかし、その配置基準は自治体によって様々です。
障がいのある子ども2人につき1人、または3人につき1人といった場合もあり、中には1対1の配置を認めている自治体もあります。
障がい児保育については受け入れの方針がそれぞれ異なり、明確な基準のない場合もあります。
規模の大きな自治体では障がい児の数も多いため公平性を保ち一定の基準を設けていますが、約半数にあたる小規模の自治体では対象の子どもが少ないので個々に対応しているケースが見られるのです。
補助保育士との違い
加配保育士も補助保育士も基準を超えて置く保育士に変わりはありませんが、補助保育士との一番の大きな違いは、補助をする対象です。
補助保育士の場合はクラス担任の補助をすることが主な仕事なので、ある特定の子どもを見るというよりは、その都度手伝いの必要な子どもがいたらサポートをしていきます。
また補助保育士は保育活動を行う際は担任の先生が困らないように、備品の準備や片付けなどクラスを運営しやすいようにサポートする役割もあります。
一方、加配保育士はある特定の子どもの支援をしていきます。
担当になった子どもについて園長や担任とはもちろん、場合によっては保護者とも直接情報交換を行い、集団生活で過ごすのに支障のないようにサポートしたり、自立できるように手助けをしたりします。
それには子どもの心身の発達についてはもちろん、担当する子どもに障がいがあればその障がいや関わり方についての知識や技術が必要です。
加配保育士の仕事内容や役割
一般的な保育士は担当のクラスをもち、個々の成長を見つめ考慮しながらクラス全体の運営をしたり方針を決めたりしていきます。
また園全体としての役割や行事の担当などもあります。
一方、加配保育士の焦点はクラス全体ではなく、担当する子どもになります。
担当する子どもの障がいや発達の度合い、個性を大切にしながら、楽しく安全に過ごせるように支援していくのが仕事内容です。
また担当の子どもに寄り添いながら適切に関わるのと同時に、クラスとしての流れを止めないようにする役割もあります。
担当する子どもにつきっきりの場合もありますが、周りの保育士と連携を取りながら集団生活で安全に安心して過ごすためにサポートしていきます。
保護者との関わりの場面ではクラス担任はもちろん送迎の際に話す機会がありますが、加配保育士はクラス担任を通して担当する子どもの様子や成長・課題について伝えていきます。
場合によっては直接保護者とやり取りをして情報交換をしていきます。
とくに集団生活が初めてのお子さんの保護者にとっては不安が大きいものです。
加配保育士のきめ細かな関わりはそうした保護者の不安をやわらげ、心のケアにもつながります。
また一般の保育士は、年、月、週のカリキュラムを立てますが、障がい児を受け持つクラスではその子どもに合ったカリキュラムを作成します。
担任が書く場合がほとんどですが、常にそばにいる加配保育士にも意見を求めたり、加配保育士が個別の支援の計画やカリキュラムを作成する場合もあります。
加配保育士の給料や待遇は?普通の保育士とは違う?
加配保育士は障がい児や特別な支援の必要な子どもを担当します。
それには担当する子どもの障がいや、その子どもの発達の段階などの知識が必要です。
しかし基本的には担任保育士の指示に従って行動します。
そういった意味では保育補助と性質が似ているため、パート、派遣、契約社員での採用が多くなっています。
したがって正社員の保育士のように賞与や特別な手当としての待遇は見込めない場合が多いです。
勤務時間は預かる子どもの時間帯などにもよりますが、フルタイムの場合や戸外活動時や給食の人手が足りなくなる時間のみ募集している場合もあります。
加配保育士になるためには?資格やスキルが必要?
加配保育士の仕事内容を見るととても専門的で特別な資格が必要なように感じますが意外にも必要な資格は保育士資格のみです。
場合によっては保育士資格がなくてもフリー保育士として採用し加配保育士の要素も含むときもあります。
また加配保育士になるために初めからスキルとして持っている必要はありません。
子どもと関わっていくうちに常により良くしようとする中で関わりの方法が身についていきます。
しかし、やはり障がいを持っていたり特別な支援が必要な子どものサポートをするので、担当する子どもはどういう障がいを持っているのかやどういう支援をしたらよいのかを、できれば事前に、難しければ担当が決まり次第、調べたり知識を持っていたほうが好ましいと言えます。
また加配保育士になるメリットとして押さえておきたいことは、長期的にみて保育士としてのスキルアップにつながるという点です。
障がいを持っている子どもだけではなくクラスに少し気になる子がいた時、早めに保護者に働きかけることでその子どもにとって適切なケアを受ける機会を早く設けることができたり、クラスの環境をそのような子どもにとって過ごしやすく整えることができます。
いずれ担任を持つ保育士として働くときも加配保育士として働いていたときに持っていた視点が役に立ちます。
加配保育士は特別な支援を必要とする子どもを預かる場合のみ募集されるので、自分のスキルアップのためにチャンスがあればやってみたいと思う保育士もいるのです。
加配保育士は大変?悩みも多い。
加配保育士の仕事はやりがいもありますが、やはり難しい場面に遭遇することもあります。
担当する子どもの障がいの度合いや種類、性格は一人ひとり異なるので自分の思い通りにいかないことも多く大変だと感じてしまいます。
例えば異なる障がいの種類の子どもを担当した場合、せっかく試行錯誤して見つけたやり方がAちゃんには通じたのにBちゃんには通じず、今度はBちゃんに合った伝え方や支援の方法をまた探さなければなりません。
また同じ障がいの子どもでも度合いが異なるようならば、やはり支援の方法を変えて接していきますが、一人の子どもに手をかけているうちにもう一方の子どもが他児に危害を加えてしまうなどという事が起きたりします。
しかし加配保育士はもともと人数が少ないため、こうした悩みも同じ立場の加配保育士同士で話し合ったり思いを打ち明けられず悩んでしまい、抱え込んでしまうといったことがあるのです。
悩みを抱えたらまずは園長や先輩保育士などに相談!
こうした悩みをひとりで抱え込んでいては、子どもにとって良い保育ができるとは言えません。
子どもにとってより良い保育をするためには何に困っているか、どのような支援をしたらよいかを周りの保育士と連携を取ることが必要です。
同じ立場の加配保育士は同じ園にはいないかもしれません。
ですが悩みを抱えていたら、まずは園長や先輩保育士などに相談する事が大切です。
別の人の意見を聞き、自分とは違った目線でアドバイスをもらうことで子どもとの関わり方のヒントがもらえたり、単に自分の不安な気持ちや上手くいかないことを伝えるだけでも気持ちの上での負担を取り除くことができることもあります。
逆に加配保育士の仕事は特殊な悩みも多いので、園長や先輩保育士も何に困っているのか分からないことが多いです。
加配保育士の立場からの意見や悩みを園長や先輩保育士に伝えていき、みんなで問題解決に取り組むことで、園全体の障がい児保育の質を高めることにもつながっていきます。
加配保育士は大変だがやりがいがあり、今後求められる仕事!
現在、多様なニーズに応える園も多くなり積極的に障がい児を受け入れる園も増えています。
また保育園の利用者の数が増えている現状では、明確な障がいでなくても特別な支援が必要な子どもは保育の現場に増えています。
こうした背景から加配保育士は今後さらに求められているのです。
加配保育士は特殊な仕事内容で大変な場面も多くありますが、じっくりと担当の子どもと関わることができ、自分の支援によっていきいきと生活している子どもを見ると手応えを感じることができます。
また子どもだけでなく保護者の支援につながっている実感もわくので感謝される場面も多いです。
こうしたことから加配保育士はスキルアップにつながるやりがいのある仕事だといえます。