保育士として働く場合、基本的に収入に応じた所得税や住民税、社会保険料などの税金がかかります。
収入が増えすぎると弊害があったり、保育士ならではの以外な出費に気をつけないと、いざというとき手元のお金が少ないなどということが起こりかねません。
そこで今回は、保育士として働いた場合に払わなければならない可能性がある税金について現役の公認会計士KOYAMAさん監修の元、学んでいきましょう。
保育士に限らず、他の職種を選択した場合にも役立つ項目であるため、是非参考にしてください。
保育士が支払う税金は四種類ある!
保育士が支払う税金は以下です。
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料
上記に加え、配偶者控除も税金に直結する項目です。
また、保育士ならではの財形貯蓄も存在するため、あわせて見ていきましょう。
【税金1】所得税
まず保育士の方が払う義務を負う可能性がある税金は「所得税」です。
ある年の収入が103万円を超えると、翌年、その所得に対して税金がかかるため、アルバイト・パートの人でも所得税については想定しておくべき税金だと言えます。
アルバイト・パート収入は「給与所得」というもので、給与所得には65万円の給与所得控除を適用させることができます。
このため、給与所得控除が適用された場合は収入である給与所得全額から65万円を引いた値に課税させることができ、控除適用前の金額よりも税額が低くなる可能性が高くなります。
例えば、収入の全額が103万円である場合、103万円を元になされる何パーセントかの課税と、103万円から給与所得控除の65万円を引いた38万円を元に課税されるのを比べれば、後者のほうが税額が少ないことは明白です。
特に所得税の場合は「基礎控除」としてさらに38万円を差し引くことができるため、給与所得の全額が103万円を超えない限りは、所得税に限り課税されないことになります。
目安としては月収8万円であれば給与所得の総額が103万円を超えず、月収9万円になってしまうと給与所得の総額が103万円を超えてしまいます。
※企業勤めの場合、年末調整で払いすぎた税金が返還されることがあります。
【税金2】住民税
次に、保育士として働く場合に考慮すべき税金は「住民税」です。
住民税とは自分が住んでいる自治体(市町村、都道府県)に納める税金のことです。
住民税も、所得税のように前年度の所得を元に納める額の計算がされます。
大体、前年度所得に対して10%の課税があります。
住民税の支払い義務が生じるのは、前年度所得が100万円を超えた場合になります。
100万円の所得が発生した本人が配偶者の場合、この配偶者自身に税金がかかってしまうことになり、世帯としての納税総額がさらに上がることになります。
税金を支払いたくない場合は、前年度所得を100万円超えないように調整すべきです。
所得税での解説と同じように、パート・アルバイトの場合は月収8.3万円、一ヶ月の労働時間を69時間以内(時給1200円で計算)にするなど可能な範囲で抑えつつ、年収が100万円を超えないように計算をしてみてください。
【税金3】社会保険料
特にパート・アルバイト保育士として働く場合に見落としがちな税金は、社会保険料です。
理由は、働く人が配偶者等であり、相手方の勤務する企業の社会保険に扶養家族として加入している場合、収入が一定の額を超えると自動的に扶養から外れてしまうためです。
扶養から外れる収入額は130万円です。
このため、これまで「所得税、住民税を払いたくない」という考えで保育士としての年収を調整している場合、社会保険料については考えなくても大丈夫です。
しかしながら、所得税・住民税の納税には目をつぶり、収入額を最大限にしたいとしていても、「扶養からは外れたくない」という場合は収入を103万円~130万円の間で調整しなければならないことになります。
扶養から外れるデメリットは様々です。
例えば扶養から外れた本人が勤務先の社会保険に入り直したり、国民健康保険に加入する必要が生じたりなど、です。
そのため、住民税と同じく、扶養から外れる働き手の家族が増えれば世帯における支払うべき社会保険料の総額も増加します。
また、社会保険料は税金の計算時に控除されます。なぜなら、社会保険料の月額は、扶養から外れる前の状態よりも増えるためです。
社会保険料には以下の種類があります。
社会保険の種類 | 概要 |
健康保険料 | 日本が国として医療制度により運営する保険料。加入すると、医療時に支払う額から一定の免除が受けられる。健康保険なしで医療にかかる場合、健康保険加入における3割負担から10割全額を負担することになり、相応の出費が予想される。 |
年金保険料 | 国民年金、厚生年金等。企業に勤務する場合は厚生年金に加入することがあり、保険料を会社側が半分負担する。年金として支払われる額は国民年金よりも厚生年金のほうが多い。 |
雇用保険料 | 月々、少々の負担でよく、万が一失業した際に失業保険が受け取れる。パート・アルバイトでも週に20時間以上勤務する場合加入が義務付けられる。離職以前に月80時間勤務の実態があり、12ヶ月以上被保険者であった事実があれば、失業手当としてこれまで納めた雇用保険料から支払いを受けられる。 |
介護保険料 | 何らかの要因で寝たきりになった場合などに介護が受けられる。40歳~64歳までの従業員が保険料を負担。毎年9月から保険料が変更。 |
【税金4】配偶者控除
配偶者控除とは、世帯における主な収入を得ている人が税金を支払う際に元の値から差し引ける金額のことです。
世帯における主な収入を得る人の所得が900万円を超えると、配偶者控除の額が最大値の38万円より減ることになります。
このため、配偶者の収入により税額を左右するという意味で、間接的な税金といえます。
また、世帯における主な収入を得る人の所得が年間900万円以下の場合、その配偶者の年収が150万円以上になると配偶者特別控除は段階的に減るようになっています。
配偶者控除を納税において気にする場合、世帯メインの所得を得る側ではない配偶者の前年度収入が年間150万円を超えないようにすればよいでしょう。
【番外編:財形貯蓄】会費・給食費
税金ではありませんが気になる出費として、保育士ならではの出費である職員会や組合費(給料から天引き)、給食費が財形貯蓄として挙げられます。
保育士の手取り金からは税金など差し引かれる項目が多いことに気をつけよう
今回は、以上のように「保育士として働く場合に支払い義務が発生する可能性がある税金」について解説しました。
保育士となった場合の「手取り金」とは、給料の全額から所得税、住民税、社会保険料等が抜かれた額となります。
所得税、住民税、保険料など保育士に限らず、さらにパート・アルバイトといった肩書に関わらず発生しうる税金があるため注意してください。
場合によっては、収入が増えすぎると扶養から外れてしまうなどの弊害があります。
また、税金ではないものの、保育士ならではの出費についても紹介しました。
財形貯蓄などは給与明細から天引きされるため、事前の確認を怠らないように注意しましょう。