保育園で働き始めて数年が経ち、思い描いていた姿になれた人もいれば「こんなはずじゃなかった」とギャップを感じている人もいます。
そうしたギャップを埋めようとすればするほど、無理して体調を崩してしまったり、モチベーションが上がらず仕事に身が入らなくなってしまったりと、悪循環におちいってしまうのです。
またその他の理由としては家庭の事情で続けることが難しいといった例もあります。
そうした時は同業種・他業種に関わらず転職を考える人も多数います。
この記事では保育士196人にアンケートをとった結果から、転職に至った理由やその理由別に転職の面接の時に何と答えれば良いかについてまとめています。
保育士の転職理由で一般的に多いのは?
子どもが好きで保育士になったのに今働いている職場では思うようにいかず、ひとりで考え込んでいると「こんなことを考えているのは自分だけなのか」と思ったり「仕事がつらいと感じる自分はダメなのではないか」と自分を責めたりしがちです。
しかし保育士が転職を考えることは、そんなに珍しいことではありません。
実際に東京都保健局が平成30年に行った「東京都保育士実態調査結果」によると、保育士の転職につながった理由にはいくつかパターンがあることがわかりました。
1番多いのが「職場の人間関係」(33.5%)で最も多く、次いで「給料 が安い」(29.2%)、「仕事量が多い」(27.7%)、「労働時間が長い」(24.9%)となっています。
その他の理由として「子育て・家事」(13.5%)や、「家族の事情(介護等)」(6.2%)と数は多くないものの女性特有の理由で転職する人もいることがわかります。
保育士の転職理由ランキングと転職先の面接での回答例
いざ転職するとなると面接では転職に至った理由も聞かれます。
辞めたいと思うほど悩まされたネガティブな理由であっても、そのまま答えてしまうのはあまり良い印象を与えません。
それどころか「うちの保育園に入ってもネガティブな事ばかり目についてしまい、すぐに辞めてしまうのではないか」と採用を足踏みされてしまいます。
ここでは実際に転職を経験した保育士196人に転職した理由についてのアンケート結果をもとに転職理由別に面接ではなんと答えたらよいかの例をあげていきます。
ぜひ転職活動の際のご参考にしてみてください。
1位:人間関係(71人)
保育士不足の昨今では人間関係を退職理由にする保育士が多いことから現場でも改善が図られてきています。
今回行ったアンケートでもやはり転職理由として人間関係が一番多いという結果になりました。
自分だけに明らかに当たりが強く、職場での居心地が悪かったです。主任に目を付けられてしまい、その主任の取り巻きの先生たちにも辛く当たられました。相談できる同期も園にはいないし、毎日行くのがきつかったです。(30代 Y.Kさん)
上司にあたる職員が怖くて仕方ありませんでした。間違っていることを指摘されるのは構わないのですが、子どもの前でも怒鳴るなど、子どもとの信頼関係にもヒビが入りそうでした。プライドもひどく傷つきました。(30代 U.Iさん)
ある先生を何人かで追い詰めて退職に追いやっているのを知ってしまい転職しました。園長や主任の先生は見て見ぬふりをしていました。今度は自分が標的になるのではと思い、ミスして目立たないように必死でした。(20代 H.Yさん)
つらい人間関係で悩み、そこに時間を費やすのは保育士の本来の仕事ができているとは言えません。
面接では、「良い人間関係のもと、安心して保育に集中したい」という思いを伝えると悪い印象を与えません。
前職では本来の仕事である「子どもの保育」以外で悩むことが多く、話し合いをしてきましたが退職することを決意しました。貴園の見学をさせていただいた際には、保育士の気持ちが子どもたちに向いていることが伝わってきました。
私も子どものことを一番に考えられるような環境で働きたく貴園を志望しました。
2位:給料の安さ(49人)
低賃金はもはや保育士の代名詞といっていい程イメージとして定着しています。
政策により多少改善されましたが、まだまだ安心して生活できるレベルには至っていないという結果になりました。
給料が仕事内容や責任の重さに対しての対価に見合っていないと相対的な給料に満足できないと感じる人が多くいます。
給料に関して10年間働いて手取りで毎月15万円に届きませんでした。家賃に食費、光熱費、携帯電話の料金を払ったら手元にほとんど残りません。子どもがいないうちはいいけれど、この先続けていくのは不安だと思いました。(40代 U.Aさん)
保育士として勤めて5年がたち、新人指導、行事の担当、クラスのリーダー等、責任のある仕事も任されるようになったのに1年目とほぼ変わらないお給料……。子どもたちは可愛いけど、仕事での評価を感じることができません。(30代 Y.Sさん)
改めて保育士は自分の命をかけて子どもの命を守る仕事なのに給料が安いと感じました。交通事故にあったら自分よりも子どもたちをかばうし、感染症の危険に常にさらされているのに、このお給料は安すぎると思ってしまいました。(30代 S.Sさん)
面接では保育士になる前にある程度給料が低いことは覚悟はしたものの、頑張った仕事に対しては正当に認められたいという思いを伝えます。
前職では保育の仕事にやりがいを感じており、周りの職員と協力して仕事に向き合ってきました。新人の育成も任され、クラスのリーダーも務めていましが、前職の給与形態はそうした成果が給与に反映される制度はありませんでした。
少しでも能力に応じた評価を頂ける場所で力を発揮したいと考えています。
3位:仕事量の多さ・労働時間の長さ(33人)
保育士の仕事は子どもと遊ぶことだけではなく、書類や日々の活動の準備など外からは目に見えない仕事が多く、働いてみてはじめて仕事の量の多さに驚きます。
また行事の前や職員が休みの時などは残業になりがちで、いわゆるサービス残業になってしまうケースもあります。
こうした労働時間の長さも転職理由になっています。
どの仕事も大変だと思うけど、保育園では残業は文化になっているかのようでした。子どもを保育しながら出来る仕事は限られているので、子どもたちが帰ったあとで作業しなければならず帰りが遅くなると夜道は本当に怖かったです。(20代 H.Kさん)
仕事の前は連日残業が続いて大変でした。作業が終わらずに早番でも遅番でも夜遅くに帰ります。それでも終わらないときはこっそり持って帰って休みの日にやるしかなかったです。帰ったら寝るだけの生活に疲れてしまいました。(30代 F.Iさん)
社員会議、クラス会議、行事の前の会議、職員の会議は子どもたちが帰ってから行うので夜までかかっていました。早番で出勤しても終わるのは22時までの時もあります。しかも2時間までしか残業代がつかず、残りの4時間は無給でした。(20代 I.Kさん)
面接の際は仕事の量はどの保育園でも多いことは変わらないので、効率を良くするために自分なりに工夫したということも伝えていきます。
前職では効率よりも人間関係を重視していたため、会議でも必要のない話が多く時間がかかってしまいました。しかし工夫次第で仕事を効率化でき、人間関係に影響なく残業を減らせると思います。
会議時間の短縮の方法などをいくつか提案しましたが、聞き入れてもらえず転職を決意しました。
3位:子育て・家庭との両立(33人)
給与面、労働時間の面、体力の面を総合的に考え、結婚や妊娠をきっかけに転職を選ぶ人も多くいます。
とくに職場に同じような立場の職員がいない場合、家庭のことで労働時間や仕事の内容などを考慮してもらいづらく、続けていくのを断念せざるを得ない場合があります。
私の園では妊娠したら辞めろという雰囲気でした。つわりは病気じゃないからと、遅刻や欠勤は許される空気ではありませんでした。迷惑かけないで!という雰囲気で続けるのは無理だと思いました。(20代 U.Kさん)
せっかく結婚したのに、残業や家に持ち帰っての仕事が山ほどあり、家事どころではありませんでした。もともと家庭に入ったほうが良いと考えている主人から、せめて職場を変えて欲しいと言われて退職しました。(20代 H.Kさん)
子どもがいるのに平気で残業させられました。熱が出て子どもを預けている保育園から呼び出しがかかったにも関わらず、人が足りないからと言われ、なかなか帰ることができませんでした。自分の子どもに辛い思いをさせてまで働くことに疑問を感じていました。(30代 A.Kさん)
女性の多い職場なので、ある程度理解のある保育園が多くなってきていますが、自分なりに仕事に支障のないように努力している姿勢を見せることで採用担当者に安心感を持ってもらえます。
前職では家庭や子育ての両立が上手くいかず退職してしまいました。いまは夫だけではなく病児保育やファミリーサポート、実家の母など協力してもらえる体制も整えています。
貴園では育休からの復帰率が高いこともあり志望しました。
自分の子どもが大きくなれば、これから子どもを持つ先生のために協力したいです。
5位:健康上の理由(28人)
保育士の仕事はハードなので、一度体調を崩すと回復までに時間がかかり治ったと思ったらまた体調を崩すというサイクルに陥ってしまうことがあります。
休みを何度も繰り返すことになると周りの迷惑を考え、一度退職して体調を万全にしてから再就職をするといったことがあるのです。
インフルエンザにかかってしまい1週間休んだあと、予後が悪く思うように体調を整えられず休んでばかりいたので一度辞めることにしました。病み上がりでも早番、遅番に入らなくてはならず辞めるまで体が辛かったです。(30代 S.Hさん)
0歳児は抱っこが多くて動けないほどの腰痛を繰り返すようになってしまいました。安静にと医師には言われましたが、仕事を続けている限り安静にしているのは難しいです。一度退職してしっかり治す必要がありました。(30代 R.Hさん)
深夜までの残業が続き、とうとう体調を崩してしまい退職しました。クラスの人数が他より多いのに、手伝いは一切なしでした。もう少し割り振りを均等にしてもらえたり、手伝ってもらえたらこんなことにはならなかったのにと思います。(40代 Y.Nさん)
今後のためにも体調不良の時はしっかりと理由を話したほうが良いです。
ですが面接では、なぜ前の園では体調の管理が難しかったのか、また今後はどうしていくのか伝えます。
私の担当していた幼児クラスは保育士が少なかったので、行事の前などは連日残業が続き、終わらない場合は持ち帰って仕事をしていました。園長に相談はしましたが仕事量を調節してもらえることはなく、体調管理が難しくなってしまい退職しました。
現在は健康状態も回復しましたので勤務には差し支えありません。
万一体調に影響しそうな場合は早めにお伝えし、ご迷惑をかけないようにいたします。
6位:他業種への興味(17人)
初めての就職から今まで保育士で頑張ってきたけれど実は違う仕事でも働いてみたかった、同じ労働時間なのに時給がうんと高かった、保育園はバタバタとあちこち動き回る仕事だけどオフィスで座って落ち着いて仕事がしてみたかった等、他業種への興味から転職を考える人も一定数います。
保育士不足の今、資格があれば他業種へ転職後に再び保育士として復帰することへのハードルが低いため、今のうちにチャレンジしたいという気持ちが生まれるのです。
やりたいことができるのは若いうちだけだと思うので挑戦してみたいと思い、憧れのカフェで働いてみたくて転職をしました。数年働いてみて満足したら、また保育士に戻ってもいいかと思っています。(20代 Y.Mさん)
サービス残業の多い保育園で働いていましたが、同じ時間働いて基本給が1.3倍になり、残業代もしっかり付くとのことで事務職に転職を決めました。デスクワークで物足りない部分もありますが、自分の時間が増えたのでジムに通ったりしてライフワークバランスが充実しています。(20代 T.Kさん)
少子高齢化社会になっていくことを考えて保育士の資格だけではなく介護の資格も取ろうと思い転職しました。保育と似ている部分もあり転職後もスムーズでした。資格を取ったあとで介護に進むか、保育に戻るか決めようと思います。(30代 H.Kさん)
他業種に転職する場合は保育園で培ってきたことを、転職先でどう活かせるかということを具体的に話すと好印象です。
前職で老人ホームに訪問に行った際に、そこでいきいきと働く方を見て、保育園とはまた違ったやりがいを感じているのだろうと思いました。前職の経験を活かして利用者様の体調やちょっとした変化に気づいたり、職場でのコミュニケーションもしっかり取り、お役に立てるように頑張ります。
7位:転居(10人)
保育士はほとんどが女性のため、結婚後は夫の職場へ通いやすいところに転居するのが一般的です。
したがって女性である保育士は転居による転職をすることが多いと言えます。
また早番・遅番もあるため、少し通勤時間が延びただけでも体力的に通うのが難しくなるケースもあります。
前の保育園では人間関係もよくて働きやすかったのですが、結婚で引越しが決まり通えなくなってしまいました。なんとか年度内まではいられるように夫と相談して引越しの日程は調整しました。(20代 T.Yさん)
家の更新とともに引越しをしました。少し無理をすれば通えなくはなかったのですが、私の保育園はシフトが1週間ごとではなく毎日変わるので体力面で続けるのを断念しました。(20代 S.Aさん)
夫の親との同居が決まり転居せざるを得なかったので続けられなくなりました。夫は通勤時間が延びても通うしかないのですが、私は家事もあるので今の家から近いところで転職先を探しました。(40代 H.Nさん)
例えば履歴書上では以前の保育園で働く期間が短かったとしても無責任だと思われないために、面接では転居で仕方なく転職する必要があったことを伝えます。
前の職場でもとても良い環境で働かせていただいていたのですが、結婚後の転居で距離的に通えなくなってしまい退職しました。貴園は自宅から通いやすいということに加えて、園見学の際に保育士の方の雰囲気が良くこちらで働いてみたいと思い志望しました。
8位:その他(9人)
今までご紹介した1~7位の理由で転職を考える人が多いですが、その他の転職の理由として「理不尽なことを言ってくる保護者の対応に疲れてしまった」「子どもは好きだったけれど仕事となるとイメージが違った」「親の介護のため仕事を続けるのが難しくなってしまった」などの家庭の事情などがきっかけで転職する人もいます。
2人担任のうち、私だけに敵意を向けてくる保護者がいて辛くて辞めてしまいました。私がお迎えに出るとまともに口も聞いてくれず、連絡もままならなかったので、あとでクレームを言われないかヒヤヒヤしていました。(30代 F.Tさん)
昔から子どもが好きだと思っていたけど、いざ相手をしてみると思い通りにならず、完璧主義の私は少しでも計画が狂うとイライラしてしまい怒ってしまいました。事務などPCが相手の方が向いていると思い転職しました。(20代 A.Sさん)
まだ若いと思っていた親が急に介護が必要になってしまい、時間が不規則な保育の仕事は体力的にもキツく辞めてしまいました。一度時短にしましたが、周りから頼られると残業も引き受けてしまうので思い切ってやめました。(40代 K.Tさん)
以前の職場ではいわゆるモンスターペアレントといわれる親の子どもの担当になってしまい、自分が標的にされてしまい、初めての体験にとても冷静になれず心身ともに疲弊して退職にいたりました。あれから自分なりにそのような親の対処法や、コーチングなどコミュニケーションを学び、もしそのような保護者がいたとしても相談させていただきながら冷静に対応していきたいと思います。
転職理由にはネガティブな項目が多いが、転職理由は前向きな言葉に言い換えて伝えよう!
転職の理由は人それぞれですが、たいていはマイナスな要素があり続けていくことができなかったため転職した人が多いです。
しかし、そうした消極的な理由で退職したとしても転職を希望する職場の面接では前向きな言葉に言い換えて伝えていく必要があります。
そのほうが面接官も「この人は嫌なことがあってもプラスに捉える力がある」と感じて印象が良くなるからです。
また1日の大半を過ごす職場では明るい気持ちを持って仕事をしたいものです。
自分自身も前の職場のネガティブな部分に目を向けるのではなく、ポジティブな期待を持って転職活動にのぞんだほうが良い結果を生み出しやすくなります。
転職を成功させるにはこうした気持ちの切り替えが大切です。