保育士にとって、服装に配慮するのはとても重要なことです。
毎日対応する保護者や散歩中にすれ違う地域住民の中には、保育士の服装で保育士や園全体の印象を決めてしまう人もいます。毎日一生懸命保育しているのに、服装の乱れで悪印象を与えてしまうのは大きな損失です。
また、保育士は子どものお手本になる存在です。子どもの見本になるためにも、きちんとした服装を心がけることは大切です。
この記事では保育士の服装で気を付けたい7つのポイントについて紹介します。どのような服装が保育士にふさわしいか、迷っている人はぜひ参考にしてください。
保育士の服装の決まりはある?
保育士の服装について、保育士業界で明確に規則が定められているわけではありません。
しかし保育士としてふさわしい服装や逆にNGとなる服装については、ある程度共通認識存在しています。
保育士業界で共有されている「業務上ふさわしい服装」についての知識は抑えておきましょう。
また、保育園の雰囲気や教育方針によって園独自の服装ルールが設定されている場合もあります。その場合は、勤務園の服装規定に従うことが優先されます。
保育士の服装選びの7つのポイント
それでは保育士が服装を選ぶときのポイントを、7つにわけて具体的に見ていきましょう。
ポイント1:保育園の規則やルールに沿った服装
保育士の服装について、勤務している園独自のルールが明確に決まっている場合があります。勤務している園のルールは基本的に守るべきものです。
おそろいの制服やエプロンなどを配布し、園で服装を統一しているところもあります。
よくあるルールとしては、以下のようなものです。
- ジーンズはNG
- キャラクターのついた服はNG
- ジャージはNG
- 行事の際はおそろいのTシャツを着る
- 式典にはスーツで参加
ジーンズやジャージはラフすぎるという理由で、キャラクターを使った保育は園の教育方針に反するからという理由で禁止されることがあります。
これらのルールは一般的なものではなく、勤務している園が変われば適用されなくなります。新しい職場に行くときは、事前に職場の服装ルールをしっかり把握しておきましょう。
ポイント2:動きやすい服装
保育士は子どもたちと一緒に運動したり踊ったりと、体を動かす職業です。
遊びの最中以外にも、掃除やトイレの介助と何かと動き回っていることが多いです。
そしてなにより子どもたちが危険な時、素早く体を動かせることが求められます。
このような仕事上の必要性から、保育士は動きやすい服装を心がけることが重要とされています。
具体的に言えば、上はシンプルなTシャツやジャージ、下は伸縮性に優れたストレッチ素材のパンツスタイルなどです。
寒い季節には、気温に合わせてカーディガンを羽織ったり、ヒートテックの下着を着て調整します。
装飾が多い服や重たい服は、動きにくいのでお勧めできません。また汚れが気になる服、破れやすい服も仕事に向いていません。
知らず知らずのうちに服を守ろうとする気持ちが生まれ、動きが制限されてしまう可能性があります。
特にスカートはすそが引っかかって破けたり、スカートがめくれてしまうことが気になったりと保育には不向きな服装です。
足が露出しているスカートでは、転んだときに大きなけがをする可能性もあります。スカートが保育園の制服として取り入れられている場合以外は、選ばないようにしましょう。
ポイント3:子どもに安全な服装
3番目のポイントは、子どもにとって安全な服装であることです。
ボタンやビーズなどで装飾されている服やエプロンを着ていると、パーツが取れたときに子どもが誤飲してしまう可能性が高いです。
また子どもが勢いよく飛びついてきたときに、固いパーツで顔や体を傷つける危険性もあります。ボタンやビーズがたくさんついた服装は避けた方が無難です。
パーカー等のひもやフードが付いている服にも注意が必要です。ひもは子どもの首に巻き付いて、窒息させる可能性があります。
また子どもに引っ張られたときに、保育士自身の首が閉まったり転倒したりするととても危険です。
アクセサリーについても同様のことが言えます。ピアス、ヘアピンなど小さくて固いものは誤飲と怪我の危険性があります。
ネックレスも子どもに引っ張られたり、パーツが取れてしまう可能性が考えられます。
一方でTシャツやジャージ、ストレッチパンツなどのシンプルな服装は安全性が高くなります。
ただし乳児クラスでは子どもがジャージのファスナーを引っ張り、指をかんだりする危険性もないとはいえません。ジャージを選ぶならできるだけファスナーのついていないものを用意しましょう。
ポイント5:自宅で洗える服装
子どもの食べこぼしが付いたり、おしっこがかかったりと、保育士の服は汚れやすいものです。
そのため大抵の場合保育士は、着替え用の服とエプロンをロッカーにストックしています。
このような環境で自宅での洗濯が難しい素材の服を着ていると、すぐに着る服がなくなってしまうでしょう。
保育士にとって何度洗っても色が落ちにくい、毛玉ができにくい、縮みにくい素材の服を揃えておくことはとても大切です。
汚れても自宅ですぐに洗えて、明日の朝には干せているような取り扱いの簡単な服を選んでください。
ポイント5:清潔感のあるシンプルなデザインの服装
保育士は子どもの食事の介助をしたり、子どもを抱っこしたりと、子どもに直接触れる職業です。
保育士自身の服を清潔にすることは、衛生的な保育環境を維持する事に繋がります。
また、保護者や地域の人に対して清潔感のあるイメージを与えることも重要です。
白色や青色の服を着ると清潔感をアピールできます。加えて無地、もしくはワンポイント程度のシンプルなデザインの物を選べば、落ち着いた印象を持たれるでしょう。
逆に原色カラーをたくさん使った服や、奇抜なデザインの服は派手に見られがちです。ダメージジーンズなど個性的な服も周りから浮いてしまう可能性が大きいです。
プライベートなおしゃれと職場での服装はきちんと分けるようにしましょう。
ポイント6:肌の露出の少ない服装
園に着ていく服にはなるべく肌の露出が少ない服を選ぶようにします。
理由は2つあります。
1つ目の理由は、肌の露出が多い服を着ていると保護者や地域の人に対する印象があまりよくないからです。
派手な人、だらしがない先生というイメージを持たれがちになるので、園にとっても保育士自身にとってもマイナスです。
下着が見えるローライズパンツ、下着が透けるシースルートップスもやめておきましょう。
2つ目の理由は、業務上の危険性が増すからです。
保育士は子どもたちと一緒に体を動かし、子どもたちが危険な時には体を張って子どもたちを守ります。
腕や足が露出していると、大けがにつながりかねません。
また、保育士は子どもとともに外で活動することが多いので、日焼け防止や虫刺され予防にも露出は少ない方が良いのです。
ポイント7:TPOに合わせた服装
保育士の服装はシンプルで清潔感のある動きやすいものが理想的です。
つまり、シンプルなTシャツとコットンパンツなどのズボンスタイルが保育士の基本の服装ということになります。
しかし、これはあくまで基本です。
保育園では様々な行事が行われるため、Tシャツでは場違いになってしまうこともあります。
TPOに合わせた服装を知って、周りから浮いてしまわないようにしましょう。
入園式や卒園式
入園式や卒園式のような式典では、基本的に保育士もフォーマルな服装をします。
服装のルールについては出席する保護者とあまり変わりません。入学式には明るめのスーツを着ます。
薄いピンク、白、水色などを選ぶと春らしくなります。地味な色合いのスーツしかない場合は、レンタルスーツを利用するという手もあります。
また園によっては「礼服で出席」と指定されることもありますが、その時は華やかなコサージュを使うとお祝いの席にふさわしい格好になります。
卒園式は別れの節目でもありますので、明るすぎる色は場違いな可能性があります。
黒やグレー、紺色のスーツを選ぶのが無難です。ただしあまり暗い色ばかりでまとめると、まるでお葬式のようになってしまいます。
ストッキングの色は黒ではなく、肌色を選びましょう。また、コサージュやパールのアクセサリーを身に着けることで、落ち着いた雰囲気の中に華やかさを演出することができます。
ただし、これらはあくまで一般的な話であり、園の方針に従うことが最も重要です。
式典でも華やかな格好ならカジュアルOKという園もあれば、しっかり袴を着て出席という園もあります。ラフな格好の式に固い恰好をしていくのも、あるいはその逆も、場から浮いてしまうのは同じことです。
入園式・卒園式に出席する予定があるなら、必ず園長や周りの職員にどんな格好をすべきか事前確認してください。
また、園によっては卒園児の担任のみ式典に出席し、他のクラスの保育士は通常保育を行うことがあります。
スーツで保育はできませんから、当日の自分の役割をしっかり把握しておくことも大切です。
運動会
運動会では会場の準備、園児への指示、保育士の出し物など、普段の保育に増して動き回る場面が増えます。
上はTシャツ、下はジャージのように動きやすさを優先した格好をしましょう。
なお、園の一体感をアピールするため、保育士が全員おそろいのTシャツを着たり、Tシャツの色を統一したりすることもあります。
運動会の開かれる季節によっては肌寒いこともあるので、気温によって服装が調節できるよう上着を用意してもよいでしょう。
足元ははきなれたスニーカーで動きやすくなるよう配慮します。
また、屋外での運動会では帽子をかぶって熱中症を予防します。
緊張感や忙しさから疲れやすくなるので、水筒や汗拭きタオルも忘れずに用意しましょう。
遠足
遠足での服装も、動きやすさにこだわります。
Tシャツとジャージのズボン、足元ははきなれたスニーカーで疲れにくくしておくのが基本です。
ただ遠足は秋後半や春先など寒い季節に行われることもあります。そんな時はTシャツの上からジャージの上着やジャンパーを着て、暖かさを保てるようにしておきます。
ただし丈の長い上着は引っかかりやすく、動きにくくなるので避けた方が無難です。バスの中と屋外など寒暖差が激しくなる場面もあるので、上着は簡単に脱ぎ着できるものがお勧めです。
なお動きやすい恰好とはいえジャージをだらしなく着たりすると、保護者や遠足先施設での印象が悪くなるので気を付けてください。
遠足ではたくさんの荷物を持って移動することが多い上、子どもの手を引いたり、動きを誘導したりと何かと忙しくなります。
大きめのリュックサックなどで、荷物を背中にまとめ、手は空けて置くようにしましょう。
プール
保育士がプール遊びに関わる場面は大きく分けて2つあります。
1つは園児と一緒にプールに入る場面です。
これは、年齢が上のクラス担任に多くなります。
プールに入るため、保育士も子どもとともに水着を着ることになります。といっても、遊びに行くときのようなカラフルな水着やビキニタイプのものは仕事着としてはお勧めできません。
屋外のプールは近隣の人からも見られやすいため、肌の露出が少ないTシャツタイプ(タンクトップタイプ)にショートパンツを組み合わせた水着を選びましょう。
水着の色は紺や黒など大人しい色にします。
さらに上からラッシュガードを羽織ることで、腕や肩の露出を防ぎつつ、日焼け対策もできます。
足元はプール用レギンスなどを着用するとよいでしょう。
なお、子供の面倒を見ながら水着に着替るのはとても大変です。
保育士は順番に着替えていくので、ぐずぐずしていると周りの保育士が着替える時間を奪ってしまいます。
そのため、水着には脱ぎ着しやすい上下セパレートのものがお勧めです。
保育士がプール遊びに関わるもう1つの場面は、プールのそばから子どもの水遊びを見守るときです。
ビニールプールで子どもたちを遊ばせる場合や、プール補助の役割についているときは保育士が水の中に直接入ることはありません。
とはいえ、子どもに水をかけられたり、シャワーの際に足元が濡れてしまうこともあります。
このようなときは、上は水で汚れてもよいTシャツ、下は7分~5分丈のパンツスタイルという服装がふさわしいでしょう。
さらに直接水につかるわけではないので、日焼け防止のアームカバーや帽子を利用して直射日光が肌にあたらないように気を配ります。
日焼け防止に上着を着る際は、子どもに後ろから引っ張られる危険を避けるため、フードなしの物を選んでください。
なお、プール遊びの格好についても園で規定がある場合があります。
どのような格好で毎年プール遊びをしているのか、園長や先輩保育士に事前に確認しておくと当日慌てずに済みます。
保育参観、お遊戯会、発表会など
保育参観、お遊戯会、発表会では保護者と関わる時間が長くなりますが、園で特に指定がない限り基本的には普段保育をしているときの格好と同じで大丈夫です。
ただし、いつも以上に保護者と近距離で接する機会が多くなるので、服が汚れていないか、清潔感を与える服装をしているかはよく確認しておきましょう。
普段よりもう少ししっかりした格好をしたいときは、無地で大人しめの色合いのTシャツ+チノパンの組み合わせでもフォーマルな印象になります。
また、お遊戯会や発表会では子どもが主役になり、その後ろで動く保育士は黒子扱いになります。
子どもの世話をしている姿が舞台上で極力目立たないようにするため、黒系の服を着るよう指示されることもあるので、発表会前に行われる当日の注意事項をよく確認しておきましょう。
保育研修(外部)
保育士は研修が多い仕事です。他園の保育士と集まって、研修会に参加する機会は何度も訪れるでしょう。
園外の研修会には、園の代表として参加することになります。保育研修は時間外や休日にも行われますが、休みだからといって派手な格好やだらしのない恰好で参加するのは控えましょう。
講師の先生や他の保育士が園全体に対して悪い印象を持ってしまう可能性があります。
保育研修も仕事時間の1つと考え、堅苦しくない程度のフォーマルな格好で参加するようにします。スーツまで用意する必要はありませんが、白シャツにチノパン・シンプルなスカートなどを合わせるとオフィスカジュアルな雰囲気を作ることができます。
スカート丈は膝下ぐらいの長さで肌の露出を抑えてください。
ただし、保育研修の中にはリトミックや運動遊び実践のような体を動かす研修もあります。
このような場合は、フォーマルな格好は研修の邪魔になってしまいます。
実践を伴う保育研修の場合は、普段の保育とおなじく動きやすくて汚れに強い恰好をしていくのがお勧めです。
さらに研修会場によっては内ズックやスリッパなど足元の準備も必要なことがあるので、研修の内容をしっかり確認してから出席しましょう。
保護者に安心、子どもに安全な清潔感のある服装で好印象を作り出そう!
保育士の服装は、仕事上の様々な場面に影響します。
動きやすく飾りのない服装を選ぶことは、子どもの安全を守るために重要です。
またシンプルで清潔感のある服装は、保護者に対して信頼感や安心感を与えます。
毎日一生懸命保育をしていても、服装1つで保護者や近所の住民に悪く見られてしまうこともあります。
しかし逆にいえば、服装を気を付けることで周りによい印象を与えることもできまず。
日々の保育に加えTPOや行事に合わせた服装を心がけて、好印象を作り出しましょう。